書評『「腸と脳」の科学 : 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』

徳島大学附属図書館のブログに寄稿しました。おすすめの本をご紹介します。

書名:『「腸と脳」の科学 : 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』
著者: 坪井 貴司
出版社: 講談社

ストレスなどが原因で、便秘や下痢、腹痛が慢性化する過敏性腸症候群は、腸と脳との相互作用がもたらす病気の代表例だ。過敏性腸症候群では、視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの影響で腸管の求心性迷走神経が過敏となり、わずかなストレスで便通異常が起こると考えられている。
また、500〜1000種類・約40兆個の細菌からなる腸内常在微生物叢が産生する長鎖脂肪酸を腸内分泌細胞が感受し、その結果分泌された消化管ホルモンであるGLP-1が求心性迷走神経を刺激し、その情報を延髄の孤束核に伝えて食欲が抑制されるのだ。
さらに、認知能力の高さと特定の細菌の多さや腸内常在微生物叢の組成の多様性に相関関係があることや腸内マイクロバイオータの多様性が睡眠の質に重要であることが示唆されているとのことだ。
この他にも人工甘味料が腸内細菌に影響を与え耐糖能異常を惹起するとの知見など、最新の知見がわかりやすく解説され、興味がかき立てられる。

11月14日より、徳島大学附属図書館蔵本分館1階ホールのMy Recommendationsコーナーに展示されています(学外者も利用できます)。ぜひ手に取ってご覧ください。

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