書評『善医の罪』 (久坂部 羊/文藝春秋)

徳島大学附属図書館のブログに寄稿しました。おすすめの本をご紹介します。


書名:『善医の罪』
著者:久坂部 羊 
出版社:文藝春秋


本書は延命治療の中止で殺人罪に問われ、2009年12月の最高裁判決で有罪(懲役1年6カ月、執行猶予3年)が確定した川崎協同病院事件をモデルにしている。

本件の患者は本書のモデル(くも膜下出血)のように気管支喘息の重積発作で心肺停止となり、心拍は再開したものの意識は戻らなかった。家族の要請に基づき気管チューブを抜管後、患者さんは苦しみ始めたため生理食塩水に筋弛緩剤を混注して投与した(この場合、呼吸筋に作用しないため安楽死とならない)。ところが看護師が静脈注射したと証言したのだ(この場合は呼吸はすぐに停止し安楽死となる)。

このように病院幹部や一部の病院職員の保身のための証言や病院から賠償金を受けとってしまった家族の正確でない証言など、真実がまかり通らない裁判の難しさについても再認識させられる。

さて、本書の裁判ではどのような判決が下されたのであろうか?


1/21より、徳島大学附属図書館蔵本分館1階ホールのおすすめコーナーに展示されています(学外者も利用できます)。ぜひ手に取ってご覧ください。  

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