書評『翠雨の人』
徳島大学附属図書館のブログに寄稿しました。おすすめの本をご紹介します。
書名:『翠雨の人』
伊与原新 著
出版社: 新潮社
猿橋賞で知られる猿橋勝子博士の生涯を描いた書だ。
最初は医学を志すも、新設の帝国女子理学専門学校に入学し物理を専攻。そして、中央気象台にて地球化学者・三宅泰雄に師事し、炭酸物質測定法の開発やオゾン層の変動を説明する理論モデルを確立した。さらに昭和29年のビキニ事件(ビキニ環礁での米国の水爆実験で、第五福竜丸が被曝した事件。重症患者は東大病院に入院し、後に徳島大学医学部第一内科教授となる三好和夫医師が治療にあたった)における「白い灰」の微量分析や海水中の放射性セシウム測定のための濃縮法を開発した。
米国スクリプス研究所の科学者から海水中放射性セシウム濃度の分析結果の正確性を糾弾されたため、単身渡米し、彼女の分析法が米国の研究所の方法より高精度であることを証明した。その結果、北太平洋西部の放射能汚染の深刻さが認知され、部分的核実験禁止条約に繋がった。大気圏内核実験が行われていた小学生時に「雨に濡れるな!髪の毛が抜ける」と注意されたのを思い起こす。
8月4日より、徳島大学附属図書館蔵本分館1階ホールのMy Recommendationsコーナーに展示されています(学外者も利用できます)。ぜひ手に取ってご覧ください。












