徳島大学附属図書館のブログに寄稿しました。おすすめの本をご紹介します。
書名:『奏鳴曲 北里と鷗外』
著者:海堂 尊
出版社:文藝春秋
ドンネル(雷)と呼ばれ血清療法の確立によりノーベル賞候補だった「北里柴三郎」と軍医としてより夏目漱石と並ぶ近代文学界の文豪として知られ、秀才として名高かった「森鴎外」が活躍した明治の三大疾病は脚気、コレラ、結核だった。二人は「医療の軍隊」を目標とし我が国の衛生学の基礎を築いたが、同時期に東大医学部に在籍するとともに、留学先のコッホ研究所で1年間一緒だったこと、互いに強く意識し合ったことはあまり知られていない。
本書では我が国における公衆衛生に貢献した緒方正規、後藤晋平、長与専斉やコッホを中心としたドイツの医学者が登場し、当時の医学の発展が描かれている。結核菌を発見したコッホが結核治療薬として「ツベルクリン」を発表したが、結核の治療効果はなく世界を惑わせたことは初耳だった。また森鴎外が一貫として脚気の細菌説にこだわった理由もみえてくる。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きている現在こそ、細菌学の黎明期を振り返る上でもお勧めの書である。
4月22日より、徳島大学附属図書館蔵本分館1階ホールのおすすめコーナーに展示されています(学外者も利用できます)。ぜひ手に取ってご覧ください。